ヴォルネイ プルミエクリュ カイユレ2016 /イヴォン・クレルジェ

11月も後半に入り、夕方になるとぐっと冷え込む日が増えてきましたね。

まだ真冬ではないけれど、温かい料理や赤ワインが恋しくなる、ちょうどその境目のような季節です。

そんな時期にしみじみ美味しく感じるのが、ヴォルネの名畑「カイユレ」。

“カイユレを飲まずしてヴォルネを語るなかれ”と言われるほど、地元で長く愛されてきた特別な1級畑で、南東向きの穏やかな斜面と小石の多い土壌が、香りの美しさとすっきり伸びる旨みを育ててくれます。

造り手はイヴォン・クレルジェ。

若いティボーが手がける2016年は、落ち着きがありながらもどこか柔らかい表情で、晩秋の夜にゆっくり向き合いたくなる一本です。

Volnay Caillerets 2016 / Yvon Clerget

Yvon Clerget

ブルゴーニュ・ヴォルネイでワインを造り続けてきた歴史あるドメーヌ、イヴォン・クレルジェ。

起源はなんと1268年までさかのぼる、ブルゴーニュ最古の家系のひとつです。

現在の当主は28代目である ティボー。

父イヴォンが2009年に引退した後、20代前半だったティボーはまず畑を売って外部での修行に専念。

具体的には、アンリ・ボワイヨや ユドロ・ノエラで畑管理・醸造を学び、さらにオレゴンのドメーヌ・ドルーアン、マールボロのギーセン・エステートでも研鑽を重ねました。

2015年、自身のドメーヌに戻り、「次世代ブルゴーニュを担う造り手」として世界から注目を浴びています。

栽培面ではリュット・レゾネ(減農薬・限界収量管理)への移行を選び、醸造面でも低温浸漬や樽熟成期間の短縮、新樽使用率の抑制といった改革を実施。

結果として、そのワインは「しなやかでエレガント、かつピュアで透明感のある果実味と力強さを兼ね備えている」と評価されています。

6 haほどの畑を所有する比較的小さな規模ながら、仕立てと管理には非常に丁寧なスタイルで臨んでおり、ファーストヴィンテージ(2015年)から既に高評価を獲得しています。

カイユレ

ヴォルネイの中でも、古くから“村の代表格”として語られてきた1級畑が Les Caillerets(カイユレ)。

その名は「小石(cailloux)」に由来し、畑を歩くとゴロゴロとした白い石が目立つほど。

これらの小石は日中の熱を蓄え、夜にかけてゆっくり放熱するため、果実の熟度を助けながらも過熟に陥らず、上品さを保ってくれるのが特徴です。

区画は南東向きの穏やかな斜面に広がり、風通しが良く、水はけにも優れています。

そのためブドウの生育が安定しやすく、香りの清らかさと、口当たりのしなやかさが両立したスタイルになりやすいと言われています。

古くから多くの造り手・研究者が「ヴォルネイの中で最も完成度の高い1級畑」と評価してきた理由は、このバランスの良さ。

可憐な赤い果実のニュアンスと、芯にそっと宿るミネラル感、そして余韻の長さ・・・それらが一体となった“ヴォルネイらしさの教科書”のような存在です。

カイユレは複数の区画から成りますが、いずれも土壌の石灰質が強めで、軽やかさだけでなく透明感ある骨格を生み出します。

しなやかで優雅なのに、どこか凛としたエネルギーがある。

地元で長く愛されてきた理由が、ゆっくり味わうほどに伝わってくる畑です。

Volnay Caillerets 2016 / Yvon Clerget

ヴォルネイの名畑カイユレは、やわらかさと凛としたミネラル感が共存する“ヴォルネイらしさ”をもっとも美しく表す一区画。

その清らかな果実味と可憐な香りは、南東向きの斜面と小石まじりの土壌がもたらすものですが、2016年のクレルジェからはそこへさらに“静かな芯”が加わったような印象があります。

若き当主ティボー・クレルジェは、ピュアで透明感のあるスタイルを大切にしながら、必要以上に抽出せず、果実そのものが持つエネルギーを素直に表現する造り手。

2016年のカイユレは、その哲学がよく現れていて、赤い果実の香りがふわっと広がり、口に含むとやわらかいのに奥に細い線が一本すっと通っている、そんな佇まいです。

タンニンは繊細で、余韻には石灰質らしいきめ細かなミネラル感。

重たさではなく、静かに寄り添うような旨みがじんわりと続きます。

“飲み頃の始まり”に差し掛かっている今なら、秋から冬への移ろいを感じるこの季節にぴったり。

寒くなる夜、ちょっとひと息つきたい時に、そっと寄り添ってくれる一本です。

2016年

2016年のブルゴーニュは、春の霜害で生産量こそ少なかったものの、残ったブドウは凝縮度が高く、酸もしっかりと保たれた“クラシックで気品あるスタイル”が魅力の年です。

特にコート・ド・ボーヌでは、ヴォルネイのように繊細なアペラシオンで、果実のピュアさと張りのある骨格がきれいに表現されやすかったと言われています。

夏以降は天候が安定し、健全な果実がゆっくり育ったことで、アロマには清らかさがありながら、味わいには奥行きが生まれました。

そのおかげで、2016年の赤は“香りの美しさ”と“静かな芯”を併せ持つ仕上がり。

果実味に過熟感はなく、タンニンには優しさと張りが程よく混ざり、村ごとの個性がはっきりと感じられます。

ヴォルネイでは特に、エレガンスが保たれながらも、普段よりやや密度のあるテクスチャーが生まれ、クラシックさの中に現代感のあるバランスが印象的。

早飲みもできつつ、瓶内での伸びしろも十分に期待できる、優れた年と言えます。

ペアリング

ヴォルネイらしい“しなやかさと香りの美しさ”を持つカイユレは、料理と合わせるとその繊細さがより引き立ちます。

2016年のクレルジェは果実の密度もほどよくあるため、軽すぎず重すぎず、幅広い秋冬メニューに馴染んでくれるのが魅力。

例えば相性抜群なのが鴨のローストや鶏もも肉のコンフィのような、旨みのしっかりした肉料理。

タンニンが柔らかいので、赤身でも白身でも合わせやすく、肉の脂とワインのミネラルがきれいに調和します。

SHINOWINEの人気メニューでいえば、カスレに添えた鴨コンフィのような“じんわり温かい料理”はまさにベストパートナー。

また、香り高い赤なので、きのこ料理(ポルチーニ、しめじ、まいたけ)との相性も非常に良く、バターソテーやリゾットと合わせると、ワインの赤果実と土っぽい香りが心地よい一体感を生みます。

おつまみ感覚なら、白カビ系のチーズ(カマンベール、ブリ)や、やさしい風味の生ハムも好相性。

気取らず楽しめるのに、合わせ方次第で“上品に寄り添う赤”として活躍するのが、カイユレの大きな魅力です。

まとめ

ヴォルネイの中でも特別な存在として語られてきた「カイユレ」。

その魅力を、若きティボー・クレルジェが丁寧に映し出した2016年は、可憐さと凛とした芯が同居する一本です。

今の季節、寒くなってきた夜にゆっくり向き合うと、このワインの優しさと深みがふわっと広がります。

初めてヴォルネイに触れる方にも、既に好きな方にもおすすめしたい一本です。

華やかすぎず、重すぎず、気持ちにそっと寄り添ってくれる味わい。

ゆっくり落ち着きたい夜に、ぜひお楽しみいただけたら嬉しいです。

 


 

 

はじめまして。銀座6丁目にあるワインバー SHINOWINEのオーナー池部紫乃です。

2022年にソムリエ資格を取得し、その後もワインの学習を続け、2025年3月に念願の自分のワインバーをオープンしました。

 

SHINOWINEでは、ブルゴーニュ、シャンパーニュを中心に、気軽に楽しめるグラスワインから、本格的なボトルワインまで幅広くご用意しています。

 

お料理もできる限り手作りにこだわりました。

看板メニューのブッフブルギニョンは1年かけて自身最高のレシピを作り上げました。様々なお店も研究し、「パリ1番のブッフブルギニョン」と評されたお店でも味わいました。

 

一軒目でしっかりとしたお食事とワインをいただきたい方にも、二軒目使いにもお勧めのお店です。

皆様のご来店をお待ちしております。

 

SHINOWINE

〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目9−14 方圓ビル3階

SHINOWINE サイトトップへ→