ワインの魅力は、同じ村名でも区画が変わるだけでまったく違う表情を見せてくれるところにあります。
今回ご紹介する Gevrey-Chambertin Clos Prieur 2015 / Harmand-Geoffroy は、その変化をわかりやすく楽しめる一本。
マジ=シャンベルタンのすぐ下に位置する「クロ・プリウール」は、上部が1級、下部が村名格という少し複雑な構成を持つ区画で、ハルマン=ジョフロワが手がけるのはこの村名部分です。
重めの粘土質がもたらす奥行きに、造り手らしいスタイリッシュな仕上がりが重なり、ジュヴレの魅力をバランスよく感じられる一本に仕上がっています。
2015年らしい豊かさを、ゆっくり味わいたくなります。
Gevrey Chambertin Clos Prieur 2015 / Harmand Geoffroy
Harmand Geoffroy
ハルマン=ジョフロワは、ジュヴレ=シャンベルタン村に根を張る家族経営のドメーヌで、伝統的な醸造を守りながらも洗練されたスタイルを追求する造り手として知られています。収穫したブドウは丁寧に除梗し、低温浸漬を経てから、ヴィンテージの個性に合わせて2〜3週間かけて発酵を行います。樽熟成は12〜16か月ほどで、新樽比率はキュヴェによって20〜50%と幅を持たせ、ワインの骨格と果実味の調和を重視した仕上がりが特徴です。
所有畑はジュヴレ村内の優良区画が中心で、マジ=シャンベルタン、ラヴォー・サン=ジャック、ペリエールなどの1級畑、さらには単独所有のラ・ボシェールを含む多彩なラインナップを持っています。いずれのワインにも共通するのは、果実の純度の高さとエレガンスが両立した“スタイリッシュなジュヴレ”という佇まい。パワフルさだけに頼らず、香りや質感の細部に気を配る造りが、愛好家からの厚い信頼へとつながっています。伝統を尊重しながらも、現代的な感性でジュヴレの魅力を表現する、硬派でありながら品のあるドメーヌです。
Clos Prieur
クロ・プリウールは、ジュヴレ=シャンベルタン村を代表する歴史ある区画のひとつで、宗教的な由来を持つ名前でも知られています。
「プリウール」とはクリュニー修道院の副院長を指す言葉で、かつて修道院の所有地であったことが伺えます。
畑はマジ=シャンベルタンのすぐ下に位置し、ラヴォー渓谷から流れ出る扇状地の中に広がっています。
そのため上部と下部で土壌が大きく異なり、上部は軽やかでミネラル感を備え、1級畑として格付けされています。
一方、下部はやや重めの粘土質が主体で、村名格に区分されます。
全体としては1級と村名格が混在する少し複雑な構成ですが、共通しているのはジュヴレらしい力強さと深みがしっかり感じられる点です。
特に村名部分は、比較的厚みのある果実味と親しみやすさが両立しており、気負わず楽しめるジュヴレの魅力を素直に表現します。
一方、上部の1級畑から生まれるワインは、より精緻で上質感が際立ちます。
複数の造り手が手がけており、それぞれのスタイルによって表情の幅があるのもこの畑の面白さ。
歴史や地形、格付けの違いが味わいに反映される、ジュヴレの“学べる畑”ともいえる存在です。
Gevrey Chambertin Clos Prieur 2015 / Harmand Geoffroy
ハルマン=ジョフロワが手がけるクロ・プリウールは、区画の南側に広がる村名格の部分から生まれる一本。
比較的重めの粘土質を含む土壌により、ジュヴレらしい厚みのある果実味がしっかりと感じられるのが特徴です。
除梗・低温浸漬を経て、ヴィンテージに合わせて丁寧に発酵を進める造りからは、果実の純度を保ちながらスタイリッシュに仕上げるこのドメーヌらしさが自然と現れます。
2015年はブルゴーニュにとって恵まれた熟度の年で、凝縮感と香りの豊かさが伸びやかに表れています。
このキュヴェでも、赤系果実のふくらみや黒系の深みがバランスよく溶け込み、口中には柔らかさと落ち着きが広がります。
樽のニュアンスは控えめで、果実と土壌のキャラクターが素直に立ち上がり、余韻には上品なスパイスとジュヴレらしい骨格が穏やかに残ります。
力強さ一辺倒ではなく、適度な重心の低さと透明感が共存する仕上がりは、まさに“現代的でエレガントなジュヴレ”。
村名格でありながら、単なるカジュアルな印象にとどまらず、丁寧な造りがしっかりと感じられる一本です。
ペアリング
クロ・プリウール2015の魅力は、ジュヴレ=シャンベルタンらしい深みを備えながらも、硬さや威圧感が前面に出ず、果実のふくらみと滑らかな質感が自然に広がるところにあります。
この“重すぎない厚み”が、幅広い料理と合わせやすい理由です。
まず相性が良いのは、旨味を重ねた肉料理。
鴨のローストや鶏もも肉のコンフィのように、脂の甘みと香ばしさがある料理とは特に好相性で、2015年の熟れた果実とやわらかなタンニンが心地よく寄り添います。
ビーフシチューや牛ほほの赤ワイン煮込みのようなコク深い料理も、ワインの持つ奥行きが味わいを引き上げてくれます。
一方で、強いソースや過度なスパイスよりも、素材の旨味を活かした丁寧な味付けのほうが、このワインのニュアンスをより楽しめます。
きのこを使った一皿や、根菜のローストのような“土の香り”を持つ料理とも良い相性を見せ、ワインのミネラル感や軽いスパイス香と調和します。
まとめ
クロ・プリウールの村名部分から生まれるこの2015年は、ジュヴレらしい深みと、ハルマン=ジョフロワらしい優雅な仕上がりが心地よく重なった一本です。
果実の厚みがしっかりありながら、重たさに傾かず、ゆっくりと香りが開いていく落ち着いた表情が魅力。
丁寧に造られた村名格の魅力を素直に感じさせてくれるワインです。
SHINOWINEでは、こうした“村名でも区画の個性がしっかり現れるブルゴーニュ”を大切にご紹介しています。
ぜひ店内でゆっくりと、クロ・プリウールの魅力と向き合ってみてください。

はじめまして。銀座6丁目にあるワインバー SHINOWINEのオーナー池部紫乃です。
2022年にソムリエ資格を取得し、その後もワインの学習を続け、2025年3月に念願の自分のワインバーをオープンしました。
SHINOWINEでは、ブルゴーニュ、シャンパーニュを中心に、気軽に楽しめるグラスワインから、本格的なボトルワインまで幅広くご用意しています。
お料理もできる限り手作りにこだわりました。
看板メニューのブッフブルギニョンは1年かけて自身最高のレシピを作り上げました。様々なお店も研究し、「パリ1番のブッフブルギニョン」と評されたお店でも味わいました。
一軒目でしっかりとしたお食事とワインをいただきたい方にも、二軒目使いにもお勧めのお店です。
皆様のご来店をお待ちしております。
SHINOWINE
〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目9−14 方圓ビル3階
