冬の気配が深まるこの季節、ふっと飲みたくなるのは、落ち着きのあるムルソー。
その中でも Meursault Clos du Murger 2017 / Albert Grivault は、華美に走らず、丁寧に研ぎ澄まされた“らしさ”を静かに感じられる一本です。
村の中心近くにある囲いの区画で育つシャルドネは、ふくらみを持ちながらも澄んだミネラルがまっすぐで、グリヴォーの端正なスタイルがよく表れます。
2017年は果実の熟度と透明感のバランスがよく、ほどよい深みが出てきた今が心地よいタイミング。
特別なシーンというより、年末の忙しさの合間にほっと一息つきたくなるような、静かで温かいムルソーです。
Meursault Clos du Murger 2017 / Albert Grivault
Clos du Murger
Clos du Murger(クロ・デュ・ミュルジェ) は、ムルソー村の中心部に近い位置にある区画で、アルベール・グリヴォーが所有する村名ムルソーの畑です。
ドメーヌの公式資料によると、畑は“murger(ミュルジェ)=掘り出した石を積み上げた壁”に由来し、区画の縁に石が積まれた地形的特徴を持っています
格式としては1級ではなく村名クラスですが、グリヴォーが長く所有し自社のクラシックなスタイルを最も素直に表現する畑として知られています。
Albert Grivault
アルベール・グリヴォーは、ムルソーを代表する名門ドメーヌのひとつで、特に1級畑「Clos des Perrières」のモノポール(単独所有)でその名を世界に広く知らしめています。
創立者アルベール・グリヴォーの代から受け継がれた哲学は、華美に走らず、果実の純度と透明感を重視するスタイル。
畑作業も醸造も丁寧かつ実直で、長期的な視点でムルソーの魅力を追求しています。
所有畑は小規模ながら重要区画が多く、村名レベルから1級畑まで一貫して高品質。
特にペリエールにおける評価は圧倒的で、「事実上グラン・クリュ」と称されるほど。
クロ・デュ・ミュルジェのような村名畑でも、凝縮感よりも“素直さ”“清潔感”を大切にし、樽は控えめ、果実の輪郭を美しく保つスタイルが特徴です。
近年は代替わりを経て、伝統的な造りの中に現代的な精度が加わり、世界的な評価が再び高まっています。
派手さはないものの、飲むほどに味わいの奥ゆきが広がる、クラシックなムルソーを体現する造り手です。
2017年
2017年はブルゴーニュ白にとって“安定感と解放感のあるヴィンテージ”と呼ばれる年です。
春の霜害も一部地域に出たものの、ムルソーを含むコート・ド・ボーヌでは比較的影響が少なく、開花から収穫までおおむね健全に進行しました。
夏は暑すぎず、夜間の気温が下がる日も多く、果実の熟度と酸のバランスが美しく保たれた年です。
2017の白は、2015や2018ほどのパワー型ではなく、2014ほどストイックでもない“ちょうどよい中庸”。
レモンや白い花の香り、ほどよい厚み、清らかな酸が調和しやすく、リリース後すぐから楽しめる親しみやすさがあります。
ムルソーにおいてもその傾向は共通で、構造はしっかりしていながら、開きが早く、透明感のある味わいに仕上がりやすいヴィンテージです。
時間とともにナッツやハチミツのニュアンスも出てきており、2024年〜2025年の今、ちょうど心地よい飲み頃に差しかかっています。
Meursault Clos du Murger 2017
Meursault Clos du Murger 2017 / Albert Grivault は、村名ムルソーらしいやわらかな果実味と、グリヴォーらしい澄んだ輪郭がきれいに重なる一本です。
香りには白桃、洋梨、レモンコンフィ、アーモンドの皮のような優しいナッツ香が混じり、熟成を経て丸みのあるタッチが出ています。
一方で、グリヴォー特有の“クリーンで静かなミネラル”が核にあり、飲み疲れしない軽やかさが魅力です。
テクスチャーはふくよかでありながら重すぎず、2017年の透明感がよく出ており、余韻には白い花とわずかな塩味が感じられます。
造り手の個性が素直に表れる畑らしく、ムルソーを落ち着いた雰囲気で楽しみたいときにおすすめのスタイルです。
料理は幅広く、鶏肉のクリーム煮、帆立のソテー、白身魚のポワレなど“やさしい旨味と乳脂肪”のある皿と好相性。
まとめ
Clos du Murger は、ムルソーの中でも特別な華やかさを求める畑ではなく、造り手の素直なスタイルが静かに表れる“日常のムルソー”を楽しめる区画です。
2017年のクロ・デュ・ミュルジェは、熟成による丸みと清らかな酸のバランスがよく、落ち着きを感じながらも香りはしっかりと広がります。
肩の力を抜いて飲めるのに、きちんと美味しい・・・そんなグリヴォーらしさが漂う一本です。
ちょっとだけ自分を甘やかしたいときや、ゆっくりワインを味わいたいときに。
季節の料理と合わせて、ムルソーらしいやわらかさを楽しんでいただけたら嬉しいです。

はじめまして。銀座6丁目にあるワインバー SHINOWINEのオーナー池部紫乃です。
2022年にソムリエ資格を取得し、その後もワインの学習を続け、2025年3月に念願の自分のワインバーをオープンしました。
SHINOWINEでは、ブルゴーニュ、シャンパーニュを中心に、気軽に楽しめるグラスワインから、本格的なボトルワインまで幅広くご用意しています。
お料理もできる限り手作りにこだわりました。
看板メニューのブッフブルギニョンは1年かけて自身最高のレシピを作り上げました。様々なお店も研究し、「パリ1番のブッフブルギニョン」と評されたお店でも味わいました。
一軒目でしっかりとしたお食事とワインをいただきたい方にも、二軒目使いにもお勧めのお店です。
皆様のご来店をお待ちしております。
SHINOWINE
〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目9−14 方圓ビル3階
