シャルル・ヴァン・カネのモレ・サン・ドニ 2019は、ドメーヌ・ユドロ・ノエラの当主シャルル・ヴァン・カネが、自身の名を冠して立ち上げたネゴシアンによる一本です。
ドメーヌで培ってきた繊細で端正なスタイルを軸に、果実の純度と土地の表情を丁寧に引き出すその造りには、一貫した美意識が感じられます。
派手さで語られるワインではありませんが、グラスを重ねるほどに静かな余韻が伸び、自然ともう一口を誘う・・・
そんなフィネスが、このモレ・サン・ドニには息づいています。
Morey St. Denis 2019 / Charles Van Canneyt
Charles Van Canneyt
シャルル・ヴァン・カネは、ドメーヌ・ユドロ・ノエラの当主として知られる醸造家であり、同時に自身の名を冠したネゴシアン「Charles Van Canneyt」を手がけています。
ネゴシアンといっても量産型のスタイルではなく、信頼関係のある栽培家から厳選したブドウや原酒のみを用い、ドメーヌと同じ美意識でワイン造りを行っている点が特徴です。
果実の純度を大切にし、過度な抽出や樽の主張を避けた仕立ては、口当たりのなめらかさと、静かに伸びる余韻を生み出します。
その味わいには、ユドロ・ノエラで培われてきたフィネスの哲学が明確に反映されています。
畑名や格付けを前面に押し出すのではなく、土地の個性を自然なバランスで表現することを重視する姿勢は、ネゴシアンという立場においても一切揺らぐことがありません。
シャルル・ヴァン・カネのネゴシアン作品は、ドメーヌの延長線上にありながら、より自由で素直なブルゴーニュの魅力を伝える存在と言えるでしょう。
名門ドメーヌ当主が「別名義」でワインを造る理由とは
ブルゴーニュでは、名門ドメーヌの当主が、自身の名で新たなドメーヌやネゴシアンを立ち上げる例が少なくありません。
その背景には、いくつかの現実的かつ創造的な理由があります。
まず大きいのは、ドメーヌ名が持つ制約です。
歴史あるドメーヌほど、スタイルや価格、畑の扱いに対する市場の期待は固定化されがちで、新しい試みを行う余地が限られます。
別名義であれば、そうした枠から離れ、村や区画、醸造方法の選択に自由度を持たせることができます。
また、畑を増やせないという構造的問題もあります。
相続や分割が難しいブルゴーニュでは、ドメーヌ単位での拡張には限界がありますが、ネゴシアンという形であれば、信頼する栽培家のブドウを用いて表現の幅を広げることが可能です。
さらに、当主個人としての美意識や哲学を、より直接的に示したいという動機も見逃せません。
名門の看板を背負う責任から一歩距離を置き、純粋に「今、自分が造りたいワイン」を形にする場として、別名義は重要な役割を果たしています。
こうしたプロジェクトは、決して逃げ道ではなく、造り手の成熟と探究心の延長線上にあるものと言えるでしょう。
ユドロ・ノエラとの違いとは
Domaine Hudelot-NoëllatとCharles Van Canneytは、いずれも同じ造り手の哲学を基盤としながら、その役割と立ち位置は明確に異なります。
ユドロ・ノエラは、代々受け継がれてきた畑を核とする伝統的なドメーヌであり、区画ごとの個性や格付けを尊重しながら、長年培われたスタイルを安定して表現する存在です。
畑・収量・醸造に至るまで制約も多く、ワインには「ドメーヌの顔」としての完成度と再現性が求められます。
一方、シャルル・ヴァン・カネは、当主シャルル自身の名を冠したネゴシアンであり、より自由度の高い表現の場として位置づけられています。
信頼する栽培家のブドウや原酒を用いながら、村やヴィンテージの個性を柔軟に捉え、過度な格式に縛られないワイン造りが可能です。
そこでは、肩書きや格付け以上に「今、この土地をどう表現するか」が重視されています。
つまり、ユドロ・ノエラが伝統と責任を背負う本流だとすれば、シャルル・ヴァン・カネは個人の感性をより素直に映し出すもう一つの軸。
両者は対立するものではなく、同じ美意識を異なる角度から示す、補完的な存在と言えるでしょう。
Morey St. Denis 2019 / Charles Van Canneyt
2019年のモレ・サン・ドニ / シャルル・ヴァン・カネは、繊細さとバランスを大切にする造り手の美意識が、モレという村の特性と相まって素直に表現された一本です。
色調は深みのあるルビーで、果実のアロマは赤いベリーと黒スグリが静かに立ち上がり、スミレや森の下草のニュアンスが奥行きを添えています。
口に含むと、きめ細かなタンニンと凛とした酸が調和し、果実味の純度がゆっくりと広がる印象です。
力強さよりもフィネスを感じさせる味わいで、重さを感じさせないまま、豊かな余韻が静かに続きます。
このワインは、シャルル・ヴァン・カネ自身が大切にする「土地の声を素直に伝える」という哲学が、ネゴシアンという立場ながらしっかりと反映されています。
樽や技巧の主張よりも、ブドウの質と村のキャラクターが前に出るスタイルで、モレ・サン・ドニらしい果実の透明感と気品が感じられる仕上がりです。
2019年というヴィンテージの成熟した果実味も相まって、今飲み頃の充実感と、これからの熟成への期待が共存する一本と言えるでしょう。
食事と合わせて軽やかに楽しむのも、ゆっくりとグラスを傾けるのもおすすめです。
ペアリング
ワインの持つ繊細な骨格と静かな余韻を活かすことがポイントです。
おすすめは、素材の旨みを素直に引き出した肉料理。
鴨のローストや鶏の赤ワイン煮、仔羊の軽いローストなどは、モレ特有のしなやかなタンニンとよく寄り添います。
ソースは濃厚すぎない方が相性が良く、きのこやハーブを使った控えめな仕立てが理想的です。
また、バターやクリームを多用しないシャルキュトリーや、熟成しすぎていないウォッシュタイプやセミハードチーズとも好相性を見せます。
ワインの赤系果実のニュアンスと酸が、脂をすっと切り、全体を軽やかにまとめてくれます。
和食であれば、鴨南蛮や甘辛すぎない照り焼き、出汁の効いた煮物なども意外なほどよく合います。
力強い主張をぶつけるよりも、料理とワインが自然に歩調を合わせる——そんな組み合わせで、このワインのフィネスはより一層際立つでしょう。
まとめ
Morey St. Denis 2019 / Charles Van Canneytは、モレ・サン・ドニという村の均衡の取れた個性と、シャルル・ヴァン・カネのフィネス重視の哲学が、静かに重なり合った一本です。
派手さで惹きつけるタイプではありませんが、グラスを重ねるほどに味わいの輪郭が整い、自然と余韻に意識が向かいます。
力強さと繊細さの中間にある、この“ちょうど良さ”こそが本質。
SHINOWINEでは、落ち着いた時間帯に、料理とともにゆっくりと向き合っていただきたいワインです。
一杯目より二杯目、そして会話が深まる頃にこそ、本当の魅力が伝わる・・・
そんな時間とともに表情を見せる一本としてご提案します。

はじめまして。銀座6丁目にあるワインバー SHINOWINEのオーナー池部紫乃です。
2022年にソムリエ資格を取得し、その後もワインの学習を続け、2025年3月に念願の自分のワインバーをオープンしました。
SHINOWINEでは、ブルゴーニュ、シャンパーニュを中心に、気軽に楽しめるグラスワインから、本格的なボトルワインまで幅広くご用意しています。
お料理もできる限り手作りにこだわりました。
看板メニューのブッフブルギニョンは1年かけて自身最高のレシピを作り上げました。様々なお店も研究し、「パリ1番のブッフブルギニョン」と評されたお店でも味わいました。
一軒目でしっかりとしたお食事とワインをいただきたい方にも、二軒目使いにもお勧めのお店です。
皆様のご来店をお待ちしております。
SHINOWINE
〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目9−14 方圓ビル3階
