ブルゴーニュ地方の白ワインの名産地として名高いムルソー(Meursault)。
そのリッチで芳醇な味わいは、多くのワイン愛好家を魅了し続けています。
しかし、ムルソーには「特級(グラン・クリュ)」の畑が存在しないことをご存じでしょうか? 一方で、数々の1級畑(プルミエ・クリュ)があり、それぞれ個性豊かなワインを生み出しています。
では、なぜムルソーには特級畑がなく、1級畑が重要視されるのでしょうか?
ムルソーは、隣接するピュリニー・モンラッシェやシャサーニュ・モンラッシェと比べて、歴史的にも行政的にも少し異なる立ち位置にあります。
過去の格付けでは特級畑が設定されませんでしたが、実際にはペリエール(Perrières)やジュヌヴリエール(Genevrières)といった1級畑は、特級に匹敵すると評価されることもあります。
これらの畑は、石灰質の強い土壌や適度な水はけを持ち、ムルソーの持つクリーミーな質感とミネラル感を最大限に引き出します。
また、ムルソーの1級畑の面白さは、畑ごとの個性が明確に表れる点にあります。
例えば、ペリエールは鋭いミネラルと長期熟成向きのストラクチャーを持ち、ジュヌヴリエールはよりリッチで芳醇な果実味が特徴です。
このように、ムルソーの1級畑は「特級畑がない」という事実を逆手に取り、それぞれが独自の魅力を発揮しているのです。
本記事では、ムルソーの代表的な1級畑をピックアップし、その特徴や魅力を詳しく解説していきます。
ムルソーの1級畑の深い世界を知ることで、この産地のワインの奥深さをより一層楽しめることでしょう。
ムルソーの主なプルミエクリュ一覧|なぜ特級がないの?
ムルソーに特級がない理由
ムルソーには、ブルゴーニュの他の名産地と異なり特級畑(グラン・クリュ)が存在しません。
その理由は歴史的・行政的な要因と、地元生産者の意向が関係しています。
1930年代、ブルゴーニュのAOC(原産地統制呼称)制度が確立される際、特級畑の指定は主に歴史的な評価や市場での認知度に基づいて行われました。
ムルソーのワインはすでに高い評価を受けていましたが、当時の生産者たちは「1級畑でも十分に市場価値が高い」と考え、特級認定を求める動きが活発ではありませんでした。
また、ムルソーはピュリニー・モンラッシェやコルトンなどと比べて村全体で品質の高いワインを生産する傾向があり、一部の畑を特級に格上げするよりも、村全体のブランド力を維持する方が有益と考えられたのです。
しかし現在、時代は当時とかわり、ペリエール(Perrières)などの1級畑は特級に匹敵する品質と評価を受けており、現在でも「ムルソーに特級畑を作るべきでは?」という議論が続いています。
ムルソーペリエ―ルとクロデぺリエールの違い
ムルソー・ペリエール(Meursault Perrières)は、ムルソーの中で最も高い評価を受ける1級畑の一つで、強いミネラル感と長期熟成に耐えるストラクチャーを持つのが特徴です。
ペリエールは「石切り場」を意味し、その名の通り石灰質の多い土壌がワインに独特のシャープさとエレガンスを与えます。
一方、クロ・デ・ペリエール(Clos des Perrières)は、ペリエール内にある単独所有畑(モノポール)で、アルベール・グリヴォ社(Albert Grivault)が独占的に所有・生産しています。
クロ(Clos)は「囲われた畑」を意味し、ここから造られるワインはペリエールの特徴を持ちながらも、より洗練され、バランスの取れた仕上がりになると言われています。
ペリエール以外の主な1級畑とその特徴
ムルソーには特級畑こそ存在しませんが、ペリエール以外にも高品質な1級畑(プルミエ・クリュ)が数多くあります。
それぞれの畑は土壌や気候条件が異なり、ワインの個性に大きな影響を与えています。ここでは、代表的な1級畑とその特徴を紹介します。
① ジュヌヴリエール(Genevrières)
ジュヌヴリエールは、ペリエールと並んでムルソーを代表する1級畑です。
名前の由来は「ジュニパーベリー(ネズの実)」で、かつてこの地に自生していたことにちなんでいます。
特徴
– ペリエールに比べると果実味が豊かで、リッチな質感
– 蜂蜜やアーモンドのニュアンスがあり、香りが華やか
– 酸はしっかりしているが、ペリエールほど硬質ではなく、比較的早くから楽しめる
② シャルム(Charmes)
シャルムは「魅力的な」という意味を持ち、その名の通りエレガントで親しみやすいスタイルのワインを生み出します。
ペリエールの南側に位置し、比較的標高が低く温暖なため、熟したブドウが得られます。
特徴
– ふくよかで丸みのある口当たり、クリーミーで柔らかいスタイル
– トロピカルフルーツやナッツのニュアンスがあり、熟成するとバターのような風味が増す
– 早めに開く傾向があり、ペリエールやジュヌヴリエールより親しみやすい
③ ポリュゾ(Poruzots)
ポリュゾはやや標高が高く、風の影響を受けやすい1級畑です。土壌には粘土が多く含まれ、これがワインに独特の骨格を与えます。
特徴
– しっかりとした酸と**引き締まったミネラル感**が特徴
– 若いうちはやや硬く、時間とともに複雑さが増す
– ペリエールほどではないが、**長期熟成にも適する**
④ ブシェール(Bouchères)
ジュヌヴリエールやシャルムに隣接する1級畑で、比較的柔らかくエレガントなスタイルのワインが生まれます。
特徴
– 優しい口当たりと繊細な果実味
– 熟成するとヘーゼルナッツやトーストのニュアンスが出る
– シャルムに似たリッチなスタイルだが、やや洗練された印象
まとめ
ムルソーの1級畑は、それぞれ個性がはっきりしており、ペリエールのミネラル感、ジュヌヴリエールの華やかさ、シャルムのクリーミーな質感など、どの畑も魅力的です。
ワイン選びの際には、好みのスタイルや熟成ポテンシャルを考慮すると、より深くムルソーの世界を楽しめるでしょう。
はじめまして。銀座6丁目にあるワインバー SHINOWINEのオーナー池部紫乃です。
2022年にソムリエ資格を取得し、その後もワインの学習を続け、2025年3月に念願の自分のワインバーをオープンしました。
(写真はシャンボールミュジニー村のレザムルーズの泉)
SHINOWINEでは、ブルゴーニュ、シャンパーニュを中心に、気軽に楽しめるグラスワインから、本格的なボトルワインまで幅広くご用意しています。
お料理もできる限り手作りにこだわりました。
看板メニューのブッフブルギニョンは1年かけて自身最高のレシピを作り上げました。様々なお店も研究し、「パリ1番のブッフブルギニョン」と評されたお店でも味わいました。
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SHINOWINE
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