クリュッグ(クリュグとも呼ばれます)はフランス、シャンパーニュ地方、ランスに本拠地があるシャンパンメゾンです。
クリュッグ(Krug)はクリュギスト(Krugist)と呼ばれる熱狂的なクリュッグのファンが存在する圧倒的な存在感を放つシャンパンです。
その品質は孤高の極みであり唯一無二の存在で、しばしばクリュッグは〝シャンパンの帝王〟とも称されます。
クリュギストという言葉があるくらいワインファンの間では知られた存在で、ミステリー小説で出てくるシャンパーニュはたいていドンペリかクリュッグです。
日本に本格的なワインブームが起きた1990年代、高級シャンパンと言えば圧倒的にドンペリニョンでした。
クリュッグは極上の品質であるにも関わらず、圧倒的に生産量が少なく、そのため当初は日本でもあまり知られていない銘柄だったのです。
クリュッグは1843年に設立されました。名前の響きからもわかる通りドイツ人のジョセフ・クリュッグが創始者です。
フランスのシャンパーニュ地方の主要都市であるランスに拠点を置く有名なシャンパーニュ・メゾンの一つで、6世代にわたり家族経営を続けましたが、1999年にLVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン社に買収されました。
LVMH社の所有になった後も6代目のオリヴィエ・クリュッグはメゾンのディレクターを務め、今も昔ながらの伝統的な製法を守り続けています。
クリュッグ シャンパーニュの基礎知識
クリュッグの歴史・起源
クリュッグの創始者、ジョセフ・クリュッグはドイツのマインツで生まれ、のちにフランスに帰化しました。
ジョセフは老舗のシャンパーニュ・メゾン「ジャクソン」で会計・簿記係として雇われました。
ジャクソン社の海外責任者としてロシアをはじめとする各国を歴訪し、シャンパンビジネスの将来性に確信を持ちます。
9年間働いた後にランスに移り住み、1843年に「クリュッグ」を設立しました。
彼は「天候に左右されずに毎年、最高の味わいのシャンパンを造りたい」と言う熱い思いを持って、クリュッグを立ち上げました。
クリュッグのユニークな点は徹底した家族経営で、社長自ら酒造りにあたることも多い点です。
現在はLVMHの傘下にはなっていますがそれでもこのスタイルは貫かれています。
畑の買収に当たってコニャックのレミーマルタン社の支援を受けましたが、それでも事業の決定権はすべてクリュッグ家によって仕切られています。
クリュッグの特徴
クリュッグはシャンパンのブレンド技術の巨匠として知られています。
ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエをそれぞれのブドウ品種の個性が最も活きる畑で栽培し、畑ごとにベースワインを作りブレンドしています。
10〜15年熟成させたベースワインを250種類以上常に所有しており、それを職人がブレンドして、そこから最低でも6年間の瓶熟成を行ってから出荷されます。
また、クリュッグはベースワインを造る一次発酵の際に、バリック(Barrique)と呼ばれる225リットルのフレンチオークの小型の樽を使用しています。
小樽を使用することにより、微妙に酸化した味わいと複雑な香りが加わります。
一次発酵はステンレスタンクを使用する生産者が多く、それに比べると手間暇のかかる方法ですが、クリュッグはそこに強いこだわりを持っているのです。
クリュッグの種類
巧みなブレンド技術で知られるクリュッグですが、単一畑での革新的なシャンパンも造っており、6つのラインナップがあります。
グランド・キュヴェ
クリュッグの生産するシャンパンの80%を占める銘柄で、ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエの3品種から造られています。
通常複数の年のブレンドをノン・ヴィンテージと呼びますが、クリュッグではこのグランド・キュベをマルチ・ヴィンテージと呼び、メゾンのフラッグシップとしています。
リザーブワインは10ヴィンテージにわたり、120種類以上ワインをブレンドして完成させた後に瓶内で6年以上熟成されます。
6年間の熟成により泡は絹糸のように細く繊細に連なります。
2011年以降のグランド・キュヴェのボトルの裏には6桁のコードがあります。
クリュッグのウェブサイトにこのIDを入力するとそのボトルのブレンドに使われたワインのヴィンテージ、ブドウ品種の割合、畑まで知ることが出来ます。
香りは様々なスパイス、フルーツの砂糖漬け、トリュフ、ナッツなどとても複雑で深く、味わいはふくよか力強いのが特徴です。
ロゼ
グランド・キュヴェ以外ではロゼのみがノン・ヴィンテージ(マルチ・ヴィンテージ)で、ピノ・ノワールを主体に3種のブドウと様々なヴィンテージをブレンドして造られます。
皮付きのまま発酵させて造った赤ワインをブレンドし、最低でも5年間の熟成をさせています。
とてもフローラルで、バターやビスケット、蜂蜜、そして柑橘の香りも感じられます。
ピノ・ノワールが加わることでスパイシーさが強まり、また骨格のしっかりした味わいです。
ヴィンテージ
〝当たり年〟にだけ生産される特別なクリュッグです。
品種の強い個性と特徴が表現できると評価された年にのみ醸造され、その年ごとに香りも味わいも全く異なります。
ヴィンテージのクリュッグは最低でも10年間熟成されます。
ヴィンテージ・シャンパンは3年の熟成期間が義務付けられていますが、それを7年も上回る長さです。
クロ・デュ・メニル
シャルドネ100%のブラン・ド・ブランです。
2ヘクタールほどの、石垣に囲まれた畑から造られています。
もともと、この畑はブレンド用の最高のシャルドネを確保するためにクリュッグが手に入れました。
しかしあまりのポテンシャルの高さに単一畑・単一品種でのシャンパン造りを行うことになったというエピソードがあります。(初ヴィンテージ:1979年)
クロ・ダンボネ
ピノ・ノワール100%のブラン・ド・ノワールです。
世界で最も希少価値の高いシャンパンと言われています。
0.68ヘクタールしかない単一畑クロ・ダンボネのブドウのみを使用しています。
クロ・ダンボネは当初から、クロ・デュ・メニルと同様に単一畑・単一品種でシャンパンを造る目的で購入されました。(初ヴィンテージ:1995年)
12年もの長い期間、熟成をさせます。
コレクション
ヴィンテージを、さらにクリュッグのセラーで寝かせ、2度目の熟成のピークを迎えてから出荷されます。
クリュッグのマリアージュ
クリュッグを飲む機会はそうそうあるものではありません。
そのためマリアージュ以前に飲む環境にこだわって、できれば静かでワインに集中できて、気持ちを盛り上げていただきたいところです。
一般的なマリアージュの理屈で検討することも可能ですが、クリュッグ単体でいただくことも最初にご検討ください。
一般論としてのマリアージュとしては、熟成香がたかく、ぶどうのポテンシャルのあるシャンパーニュとの相性ということになります。
熟成感としっかりした旨味・コクのあるタイプのシャンパンなので、イベリコ豚の生ハムや熟成期間の長いコンテチーズ、豚肉や鶏肉を使用したパテやペーストを使ったこってりした前菜に合わせるととても良くマッチします。
魚卵系のカナッペも鉄板でしょう。キャヴィアを載せたブリニにサワークリームをあわせる前菜は最高のマリアージュです。
また、前菜であれば牡蠣をソテーした魚介料理などをおすすめします。クリュッグの複雑さがソテーした牡蠣の風味と良く合います。
ロゼは若干の渋味があるため、よりリッチな口当たりのお料理が合います。
前菜でもいいですが、思い切ってメインディッシュに合わせてみてもいいでしょう。
クリュッグのロゼは大変に風味が強いのでお肉料理にもしっかり合わせられます。
フォアグラ、ラム肉、ローストした鹿肉などのジビエのお料理とも良く合います。
また、シャンパーニュはコース料理を一本で楽しむ場合にも重宝します。
そのためデザートに合わせてクリュッグをいただくのもいいですね。
蜂蜜やドライフルーツの繊細な香りを味わいたい時はクリュッグ・ロゼ単体で楽しんでください。