シャンパーニュ・クリスタルとは?基礎知識と味わいの特徴の解説

クリスタル(Cristal)はルイ・ロデレール社( Louis Roederer)のフラッグシップとなるシャンパーニュのキュヴェです。

(ルイ・ロデレール社は売上1億6000万ユーロ、経常5600万ユーロを誇ります。1776年にシャンパーニュで設立された、家族経営を続けるメゾンとしては世界最大規模のシャンパン・メゾンです。)

クリスタルはもともと1876年にロシアの皇帝アレクサンドル2世(tsar Alexandre II.)のために造られたもので、世界最古のプレステージ・シャンパーニュとして知られています。

この「世界最古のプレステージシャンパーニュ」はシャンパーニュの歴史としても意義深いものがあります。

 

ブドウ栽培の北限にあり、かつ、当時から絶大な人気のあるシャンパーニュは安定した供給が求められました。

そのため古くからアサンブラージュが行われ、異なるブドウや畑、複数年のワインをブレンドすることで品質の均一化が図られたのです。

しかし、後述する特殊な事情のもと、特定の収穫年やブドウ畑から最良のシャンパーニュが造られ、このクリスタルがプレステージシャンパーニュの走りとなるのです。

 

ロシア皇帝の伝説と豪華なパッケージの華やかさ、卓越した品質からシャンパンの最高傑作とも称賛されて居ます。

 

シャンパーニュ クリスタルの基礎知識

クリスタルの歴史・起源

1855年以降に、ロシアの貴族の間でシャンパーニュの人気が高まりました。

その中でもルイ・ロデレール社の人気は高く、同社の3分の1をロシアに出荷していました。

 

ロシアのアレクサンドル2世↑はルイ・ロデレールのシャンパーニュを愛飲していました。

この流れのなか、1873年ロマノフ朝は、同社に彼のためのスペシャルなシャンパーニュを造ることを所望するのです。

その3年後の1876年にクリスタルは誕生しました。

 

クリスタルは宮廷で出すために造られたものであり、1945年以前には一般に出回ることはありませんでした。

 

 

クリスタルのボトルが透明な理由

https://www.louis-roederer.com/fr/wine/cristal

当時のロシアは政治情勢が不安定だったために、皇帝は暗殺を常に恐れていました。(実際に10回もの暗殺未遂がありました。)

典型的なシャンパンのボトルは濃い緑色で、底が窪んでいるので毒物が混入されたり下に爆発物が隠される危険があります。

これを防ぐために透明で底が平らな鉛ガラス(クリスタル・ガラス)を採用したのです。

 

それ以来、このシャンパーニュは「クリスタル」として知られるようになりました。

通常ワインは瓶が光を通すと品質の劣化が心配されるため、濃い色の瓶色が採用される傾向があります。

しかしクリスタルは、そのリスク以上にこのワインの起源や伝統を尊重したため、現在でも透明のクリスタル瓶を採用しているのです。

 

クリスタルの特徴

クリスタルは7つの特級畑を含む8つのルイ・ロデレール社の自社畑の中から、ブドウが素晴らしい状態で収穫された優良年にのみ造られます。

同社が保有する自社畑は240ha(東京ドーム48個分)もの広さがあるために、クリスタルはヴィンテージ物ながら比較的多くの年に生産することが出来ます。

 

最良の素材を、ルイ・ロデレール社の天才と名高いジャン・バティスト・レカイヨンがワイン造りをしています。

(ジャン・バティスト・レカイヨンはメゾン傘下のボルドーやカリフォルニア、ポルトも監督する醸造責任者兼副社長)

 

また、ルイ・ロデレール社は約20年前からビオディナミ(※1)を採用し広大な自社畑のうち約半分をオーガニックで栽培しており、畑の質も年々向上しています。

通常のクリスタル・ヴィンテージで瓶詰め後6年間もの長期間セラーで熟成され、デゴルジュマン(澱引き)後さらに8ヶ月寝かされた後に出荷されます。

 

(※1)月の満ち欠けなどを考慮して行う有機農法の一種。

 

クリスタルの味わい

クリスタルは非常にバランスが良く洗練された味わいです。

また、熟成感とフレッシュさの両方を兼ね備えている事でも知られています。

 

レモンやグレープフルーツなどの柑橘系果実香、トーストや蜂蜜など様々な要素がマッチし複雑な味わいです。

泡立ちはクリーミーできめ細かく、シルクのようです。

コクと甘み、まろやかさが広がりますが、チョーキーなミネラル感とフレッシュな酸が引き締め、心地よい余韻が続きます。

 

クリスタルのラインナップ

ルイ・ロデレール クリスタル

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シャルドネ40%とピノ・ノワール60%のブレンド。

8年間の熟成の後に澱引きをし8ヶ月寝かせて出荷されます。

 

ルイ・ロデレール クリスタル・ロゼ

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ルイロデレール社の自社畑の中のグランクリュから収穫されたピノ・ノワール55%にシャルドネ45%のブレンドで6年間熟成されます。クリスタルの誕生から100年後に生まれたシャンパンです。

 

ルイ・ロデレール クリスタル・ヴィノテーク

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樹齢25年以上の古樹から収穫したブドウを使い、20年間もの熟成期間を経たもの。

 

ルイ・ロデレール クリスタル・ロゼ・ヴィノテーク

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ピノ・ノワール70%にシャルドネ30%のブレンド。

10年から20年もの間瓶内熟成させ、さらに澱引き後10年寝かせたもの。

 

クリスタルのペアリング

このクラスのシャンパーニュになるとワインと料理のペアリングとともに、ワイン単体での味わいも検討したいところです。

ワイン単体で味わう場合は、できれば静かでよい環境のもと、グラスや温度にもこだわって楽しみたいワインでしょう。

 

お料理とのペアリングでは、クリスタルは辛口のシャンパンではありますが、極上のブドウと技術によって生まれる味わいのため、お料理もできれば品質にこだわりたいところです。

白トリュフ、キャビア、フォワグラなど、一般的な高級シャンパンに合うお料理全般に合わせることが出来ます。

爽やかな酸味が揚げ物やお肉の脂っぽさを切ってくれます。

 

また、クリスタルはフレッシュさに力強さと複雑さを併せ持って居るので、牡蠣やスモークサーモンを使った前菜から、鶏肉、仔牛などの肉をバターやクリームベースのソースで仕上げたメイン料理にもおすすめです。