ムルソー(Meursault)は、フランス、ブルゴーニュ地方、コート・ド・ボーヌ地区の中心部に位置する村です。
北にヴォルネー、南にピュリニー・モンラッシェがあり、標高230メートルから360メートルの範囲に広がるなだらかな斜面でシャルドネが栽培されています。
ブルゴーニュには多くの名醸地がありますが、ムルソーもそれらに匹敵する品質のワインを生産しています。
「ムルソー」という名前は「ネズミのジャンプ」に由来するとされ、昔は白ブドウと赤ブドウが近接して栽培されていたためだと言われています。
ただしなぜネズミのジャンプなのかはわかりません。
想像するとすれば、ねずみがジャンプすれば白と黒のブドウを行き来できる、というイメージでしょうか。
ムルソー ワインの特徴と味わい、お料理とのペアリング
ムルソーの白ワイン
ムルソーは特に白ワインが有名です。おそらく白ワインの人気という点ではピュリニーモンラッシェと双璧をなしていて、生産量の多さや知名度という点ではムルソーの方が勝るでしょう。
村名ワインでも上質なものが多く、さらに上位のプルミエ・クリュ(1級畑)には、グラン・クリュに匹敵する「ジュヌヴリエール」、「ぺリエール」、「シャルム」、「グット・ドール」などがあります。
一方で、ムルソーでは全生産量のほんの数%の赤ワインがあり、おもに北側の一部で生産されています。
ただし一般的な知名度でいえばムルソーと言えば白ワインなので、赤ワインは決して白ワインほどの評価を受けているというわけではないようです。
実際の味わいは、ムルソーの赤ワインは、ピュアな果実味が中心で、フローラルな印象の早飲みタイプが多いです。
高品質なワインの特徴
ムルソーのワインは、豊かなミネラル感が特徴です。
また、樽熟成との親和性があり、樽熟成由来のバニラやバター、トーストなどの香りが豊潤で、これが熟成をすることでモカやカフェオレの様な香りに昇華をします。
生産者によって熟成や味わいの違いはありますが、一般的に村名クラスで5年から10年、一級畑では20年程度は熟成によって品質は向上します。
収穫年や畑、生産者によってはさらに熟成を重ねることもあり、世界でも有数の銘醸ワインとなります。
シャルドネは石灰質土壌に適しており、ムルソーは石灰質と粘土質の土壌を持ち、力強さと厚みのあるワインを生み出します。
熟成によって味わいが変化し、若いうちはミネラル感と力強いアロマが中心ですが、熟成することで黄色いフルーツのアロマに変わり、ボディーも柔らかくふくよかになります。
ムルソーの歴史
1950年代から1960年代まで、ムルソーはあまり注目されていませんでした。
当時は赤ワインの生産量と販売価格が高く、ムルソーのシャルドネは人気がなく、自分たちで瓶詰めして販売することが多かったのです。
ムルソーが注目されるようになったのは、1980年代のアメリカでの「シャルドネブーム」です。
この時期、濃厚で力強いムルソーのワインがアメリカのワイン愛好家に好まれ、一気に名が広まりました。
ムルソーはピュリニーモンラッシェに比べると柔らかく味わいはキャッチーで、若いうちから楽しめる特徴があります。
また、「ムルソー」という響きが特に英語圏の方には良い響きに映るらしく、イギリスやアメリカのワインファンに絶大な人気となるのです。
ムルソーの格付け
ブルゴーニュのワインは畑ごとに格付けされています。
ムルソーにはグラン・クリュはありませので、プルミエ・クリュが最上位です。
代表的なプルミエ・クリュには、「ジュヌヴリエール」、「ぺリエール」、「シャルム」があり、これらの畑から生まれるワインはグラン・クリュを上回る評価を得ることもあります。
一般的な価格帯でいえば村名クラスのムルソーで2~3万円、1級クラスで5万円程度はしますので、簡単には手が出せる金額ではありません。
生産者や収穫年によっては10万円を超えるワインもざらにありますので、お祝いの時などの特別な時に飲むワインと言えるでしょう。
ムルソーに合う料理
ムルソーのワインは魚介料理や甲殻類との相性が良く、オマールブルーのローストや手長エビの香草パン粉焼きなどが特におすすめです。
また、白身魚のクリスピー焼きや鶏肉料理ともよく合います。
例えば、ブレス産若鶏のフリカッセなど、クリームを使った料理との相性も抜群です。中国料理では、魚介と白湯のスープや伊勢海老のXO醤炒めなども良いでしょう。
基本的に果実の風味と樽熟成からくるバターやトーストの印象が溶け込んだ風味なので、バターでソテーした料理やクリーム煮込みなどの乳製品を用いた料理との相性が良いとされています。
他のブルゴーニュワインとの比較
シャブリ地区のワインはムルソーよりもシャープで切れ味があり、ピュリニー・モンラッシェは引き締まったミネラル豊富なワインを生み出します。
ムルソーは、これらのワインと比べて、よりリッチでふくよかな味わいが特徴です。
一般的にムルソーは若いうちでも華やかで開いていて、キャッチーな風味が楽しめるとされています。