ブッフ・ブルギニョンは、フランス料理の一種で、牛ほほ肉を赤ワインと野菜で煮込んだ料理です。
この料理の起源は、ブルゴーニュ地方にさかのぼります。フランスの伝統的な家庭料理として知られ、19世紀にはブルゴーニュの農家が余った牛肉を有効活用するために考案されました。
ただし当初のブッフブルギニョンは現在の様な洗練されたものではなくて、あまったくず肉などをなんとか柔らかくして食べられるようにしようというもので、決して豪勢な料理というものではなかったようです
20世紀に入ってパリのレストランのシェフによって、ブルゴーニュ風の牛肉の煮込みとしていくつか紹介されると、競うようにしてブッフブルギニョンはレストランの料理として洗練をされて行きます。
赤ワインの使用が特徴で、これによって肉が柔らかくなり、深い味わいが生まれます。
ブッフ・ブルギニョンは、シンプルでありながら風味豊かな料理として、フランス料理のクラシックな一品として広く親しまれています。
私はブッフブルギニョンが得意で、様々なタイプのブッフブルギニョンを作り、ワインと合わせています。
今回はブッフブルギニョンとワインのペアリングについて検討してみたいと思います。
ブッフブルギニョンとワインのペアリング
ブッフブルギニョンのレシピによって柔軟に変える
ブッフ・ブルギニョンとワインのペアリングは、料理の豊かな味わいとワインの風味が相互に補完し合うことが求められます。
牛肉の煮込み料理ですから、赤ワインソースが特徴的で、料理の味わいには、濃厚で深い肉の旨み、赤ワインの風味、香り豊かな野菜の風味が含まれます。
適切なペアリングとしては、軽めから中程度のボディを持つ赤ワインが理想的です。
例えば、ブルゴーニュ地方のピノ・ノワールやボルドー地方のメルローが適しています。これらのワインは、柔らかいタンニンと適度な酸味を備えており、ブッフ・ブルギニョンの豊かな味わいを引き立てます。
また、ワインの果実味やスパイスのニュアンスが料理と調和することも重要です。
赤いベリーやチェリーのフルーツノートがあるワインは、肉の旨みと調和し、同時に料理の複雑な風味に奥行きを与えます。
総じて、ブッフ・ブルギニョンとのワインのペアリングでは、様々な要素を考慮してバランスを取ることが重要です。
料理とワインが相互に引き立ち、共に楽しむことができるハーモニーを見つけることが、食事をより一層豊かなものにする秘訣と言えます。
名称こそブッフブルギニョンですが、実際の煮込みのワインには濃い色調のブルゴーニュワイン以外のワインを用いられることも多く、この場合には繊細なブルゴーニュワインでは合わないことも出てきます。
また、レシピによってはスパイスが加わることもあるので、この場合はレシピに応じてスパイシーな南フランスのワインを合わせることも柔軟なペアリングになります。
ブッフブルギニョンの肉の部位によるワインペアリング
レストランのブッフブルギニョンの肉は、牛ほほ肉を使用することが多いですが、実際には複数の部位があります。肉の部位によって風味や食感に微妙な違いがあります。
- 牛ほほ肉(Cheek): ブッフ・ブルギニョンの伝統的な主成分で、この部位は脂肪と結合組織が豊富で、低温での長時間の調理により柔らかくジューシーな肉に仕上がります。濃厚な肉の旨みが料理に特徴的な味わいを与えます。かなりねっとりした風味になりますので、ワインの味わいもある程度の渋みがあったほうが合わせやすくなります。
- 肩ロース(Chuck Roast): 牛ほほ肉に次いでよく使われる部位で、脂肪と肉のバランスが良いです。この部位も低温での調理により、肉がほろりと崩れやすくなります。肩ロース肉の独特の風味もありますので、ややスパイシーなワインの方が合わせやすくなります。
- ビーフショートリブ(Beef Short Ribs): 一部のレシピでは、ショートリブを使用することもあります。長時間煮込むことによって肉の風味が生きた味わいになりやすいです。ややさっぱりした風味に仕上がるので、渋みの控えめな繊細なワインが合わせやすいです。
これらの部位の共通点は、長時間の煮込む工程によって肉が柔らかくなり、赤ワインソースと共に深い味わいが広がることです。
選ばれた部位により、料理のテクスチャーや風味が微妙に異なり、それぞれが独自の特長を持っています。
ブッフブルギニョンとブルゴーニュワイン
ブルゴーニュ地方産の赤ワインは、特にピノ・ノワールを主成分とするものが一般的で、このワインがブッフ・ブルギニョンと素晴らしい相性を示します。
ピノ・ノワールの軽やかな酸味と柔らかいタンニンは、料理の豊かな肉の旨味と調和し、口の中で滑らかに広がります。
ブルゴーニュのワインは通常、赤い果実の風味、花の香り、そして微妙なスパイスのニュアンスを持っています。
これがブッフ・ブルギニョンの深みのある味わいと調和し、食事全体に奥行きを加えます。
また、ワインの酸味が料理の油っぽさを軽減し、後味を清涼感で締めくくります。
ただし一方で、もともとのブッフブルギニョンはかなり素朴な料理で、実際の現地で出されるブッフブルギニョンも決してレストランのシェフが作るような洗練されたものではありません。
ブッフブルギニョンは20世紀に入ってパリのレストランのシェフが競うようにして洗練をさせていった経緯があるため、あまりブルゴーニュワインにこだわりすぎるのも無理がある場合もあります。
というのも、ブルゴーニュワインはそもそも繊細さと洗練さが魅力のことも多く、渋味は控えめなこともあります。
この場合にゼラチン質や脂分の多いブッフブルギニョンですとワインが負けてしまうこともあるため、レシピごとに検討することも大事になってきます。
ブッフブルギニョンとボルドーワインのペアリング
ブッフ・ブルギニョンとボルドーワインのペアリングは、むしろブルゴーニュワインとのペアリングよりも合理的なことも多いです。
というのも、ブッフ・ブルギニョンは赤ワインで煮込まれた牛肉の料理で、その深いコクと香りが特徴ですが、シェフによっては色合いの濃い赤ワインを使用していて、決してブルゴーニュワインにこだわっているわけではないからです。
ボルドーワインは、メルローやカベルネ・ソーヴィニョンを主成分とすることが多く、これらの品種は濃厚で力強な赤ワインを生み出します。
ブッフ・ブルギニョンの肉の豊かな旨味やコクに対抗しつつ、十分な構造やタンニンを持つボルドーワインは、むしろブルゴーニュワインよりも料理とのバランスを取るのに適しています。
ボルドーワインの赤い果実の風味、スパイスのアクセント、そしてしばしば感じることのできるタバコやチョコレートのニュアンスは、ブッフ・ブルギニョンの複雑な風味と素晴らしい調和を成すでしょう。
ワインの酸味が料理の豊かな肉の脂肪感を引き締め、余韻が続くことで食後の満足感も増します。