バローロのMGAとは?全体像・歴史と代表的なMGA一覧

イタリアワインの中でも特に高級で評価の高いバローロは、ピエモンテ州のランゲ地域で生産されるワインであり、ネッビオーロ種を使用しています。

バローロは、歴史的なワイナリーやトラディショナルな製法が根付いており、その製法や味わいはワイン愛好者にとって重要な要素となっています。

 

近年のMGA(Menzioni Geografiche Aggiuntive)の認定は、バローロにおいて特定の畑やサブゾーンの重要性を強調し、ワインの品質や個性をより具体的に表現するための取り組みです。

これにより、バローロの異なる地域や畑の違いを認識しやすくし、消費者により詳細な情報を提供することが可能になりました。

 

これまで、バローロは一般的にブレンドされたり、地理的な表示が一般的でしたが、MGAの導入により、特定の畑やサブゾーンがクリュとして表示されるようになりました。

この変化は、ブルゴーニュのワインにおけるクリュの表示と同様に、畑の個別性や土壌の違いがワインに影響を与えるという理念から生まれました。

 

MGAの導入には、ピエモンテ州のワイナリーや生産者、そして地元のワイン協会などが関与し、地域のワインの多様性や特徴を保護・強調するための取り組みとして評価されています。

これにより、消費者は特定のMGAのバローロを選ぶことで、その畑やサブゾーンの個性をより深く理解し、楽しむことができるようになりました。

 

代表的なMGAとしては、以下のようなものが挙げられますが、これはあくまで一例であり、他にも多くのMGAが存在しています。

Cannubi

Bussia

Brunate

Monprivato

Rocche dell’Annunziata

これらのMGAは、それぞれが独自の特徴や土壌を持ち、畑の違いがワインに表れています。

MGAの導入により、バローロ愛好者はより詳細かつ深い知識を得ることができ、ワインの魅力をより一層味わうことができるようになりました。

 

バローロの”MGA”とは?

バローロの歴史

最近まで、19世紀半ばまで、バローロは甘いワインだと考えられていました。

これは、ネッビオーロのぶどうが10月に遅く熟れるため、収穫時には気温が着実に下がるという事実に起因していました。

11月と12月には、ピエモンテ地方の気温が低くなり発酵が停止し、すると結果としてワインには相当量の残存糖が残っていたのです。

 

19世紀半ばに、グリンザーネ・カヴールの市長であるカミッロ・ベンソ伯爵↑がフランスの醸造家ルイ・ウダールをバローロ地域に招き入れ、地元の生産者のワイン製造技術を向上させることに成功します。

セラーの衛生改善に焦点を当てた手法を使用したウダールは、ネッビオーロを完全に発酵させ、最初の現代でいう味わいのバローロを造りました。

この新しい辛口の赤ワインはすぐにトリノの貴族とサヴォイア家の統治者の間で人気となり、「王たちのワイン、ワインの王」として広く知られるようになるのです。

 

 

20世紀半ばにはバローロ地域のワイン生産は大手ネゴシアンによって支配され、彼らは地域全体からぶどうを購入し、それをバローロスタイルにワイン造りをしていたのです。

1960年代には、個々の所有者が生産者元詰めを始め、所有地からの単一の畑のワインを生産し始めました。

1980年代には、多くの単一畑のボトリングが利用可能となり、地域の生産者たちの間で畑のクリュ分類を開発する可能性についての議論が起こりました。

 

この流れを受けてMGAの概念は台頭するのです。

 

バローロMGAの経緯

2014年にMGA(Menzioni Geografiche Aggiuntive)の表記が認められた背景には、バローロの歴史において単一畑の文化が初めから確立されていたわけではないという事実があります。

昔は、バローロは大商人が複数の農家からブドウを購入し、それをブレンドしてワインを生産していました。これにより、各地の畑の特徴が一つのワインに組み合わさる形で造られていました。

 

しかし、1961年にプルノットが初めて単一畑「ブッシア」のワインを製造し、その後にはヴィエッティの「ロッケ・ディ・カスティリオーネ」などが続き、畑ごとに異なる特性を引き立てるクリュ・バローロが生まれました。

1979年には、ラ・モッラの生産者であるレナート・ラッティが、バローロ地図を作成しました。

この地図は、44のクリュを示し、それぞれの畑のテロワールやワインの独自の個性の違いを強調しています。

また、私的見解に基づいた格付けも行い、これによってバローロのクリュの概念が確立されたと言われています。

 

これらの取り組みにより、バローロの製造者や愛好者は畑ごとの差異を認識し、ワインの深い魅力を追求することが可能になりました。

MGAの導入は、この文化を更に進化させ、畑やサブゾーンの表示が一層重要視されるようになりました。

 

 

クリュの概念はなぜ生まれたのか?

バローロを生み出すランゲの丘陵は、一枚の斜面ではなく、起伏に富んだ多面体のような地形を有しています。

西側に位置するラ・モッラやバローロの村は温暖な気候で、青い泥灰土の軽めの土壌が特徴です。

一方で、セッラルンガ・ダルバやカスティリオーネ・ファレットがある東側は冷涼な気候で、灰褐色の泥灰土で鉄分が多い重めの土壌が広がっています。

 

西側は一般的に、その土壌と気候の影響を受け、華やかな香りと柔らかなタンニンが特徴のワインが生まれると言われています。

一方で、東側はより力強く、しっかりとしたタンニンを持つ長期熟成が期待されるワインが育まれます。

 

さらに、バローロでは各村ごとに微気候(ミクロクリマ)が存在し、畑ごとに斜面の向きや角度、日照時間、土壌の差異があります。

これらの要素が組み合わさり、異なる個性を持ったクリュが形成されています。

 

バローロの複雑で多様性に富んだテロワールを的確に表現するために、MGAの制度が導入されたのです。

MGAは畑やサブゾーンごとの特徴を強調し、ワインの起源や個性をより具体的に示すことができる仕組みとして、バローロの多様性をより深く理解し楽しむために貢献しています。

 

代表的なバローロのMGA

以下は代表的なMGAについての紹介です。

  1. ロッケ・デッラヌンツィアータ Rocche dell’Annunziata:
    • ラ・モッラ村で最も有名な単一畑で、レナート・ラッティやロベルト・ヴォエルツィオなどが所有している。南南東向きで日照が豊富な土地で、青い泥灰土の土壌からエレガントなワインが生まれる。
  2. ブルナーテ Brunate:
    • ラ・モッラ村に位置し、ロベルト・ヴォエルツィオやジュゼッペ・リナルデなどが所有する畑。ラ・モッラらしいエレガントな特性を持ちながら、粘土質が含まれた重い石灰土壌が力強く厳格なバローロを生み出す。
  3. カンヌビ Cannubi:
    • バローロ村にあり、イタリアワイン醸造の源とされる有名なクリュ。標高150~350mで、砂質で石灰質を多く含む土壌が広がり、エレガントなタンニンと豊かな果実味を備え、長期熟成向きのワインが生産される。
  4. モンプリヴァート Monprivato:
    • カスティリオーネ・ファレットに位置し、ジュゼッペ・マスカレッロが単独所有する最も権威ある畑。非常に高い石灰分を含む土壌で、恵まれた環境にあり、バローロの中でも最高峰とされる。
  5. フランチャ Francia:
    • セッラルンガ・ダルバ村の南端に位置するジャコモ・コンテルノの単独所有畑。日照を受けやすく、クラシックで長期熟成向きのワインを生み出す。ジャコモ・コンテルノは伝説的な存在として尊敬されている。
  6. ブッシア Bussia:
    • モンフォルテ・ダルバ村にある広大な畑で、アルド・コンテルノやプルノットなどが所有。広大な畑でありながら、エレガントな味わいとストラクチャーを持ち、熟成能力も兼ね備えたワインが生まれる。

 

主なMGA

Barolo

Bricco Viole, Brunate, Cannubi, Cannubi Boschis ,Rue,San Lorenzo ,Sarmassa ,Via Nuova, Rocche di Castiglione

Castiglione Falletto

Bricco Rocche, Fiasc, Mariondino, Monprivato, Parussi (or Parusso), Pira,Rivera, Villero

La Morra

Arborina, Brunate, Cerequio, Gattera, Giachini,Marcenasco, Rocche dell’Annunziata

Monforte d’Alba

Bussia, Cicala, Colonnello, Dardi, Ginestra,Mosconi, Munie, Romirasco, Santo Stefano

Serralunga d’Alba

Falletto ,Francia, La Serra, Marenca, Marenca-Rivette,Margheria, Ornato, Parafada, Vigna Rionda

 

まとめ 小区画化は世界の潮流

今回はバローロのMGAに関するご紹介をさせていただきました。

バローロはその異なる村や畑ごとの個性に富んだ産地として知られています。通常のソムリエ試験などでは、村の名前や地理的な位置が重要視されますが、バローロの内部にはクリュ(畑)ごとに異なる特性や味わいが広がっています。

 

クリュ・バローロの世界は非常に奥深く、畑ごとの微妙な違いがワインに影響を与えています。

これらの畑から生まれるバローロを試してみることで、その多様性や奥深さをより感じることができるでしょう。

 

世界の高級ワインの産地では、多くがより小さな区画に着目し、その畑ならではの個性を打ち出したものが高い評価を受けています。

生産者にすれば棲み分けをしてワイン造りをすることで個性を発揮しやすくなり、消費者にとっては選ぶ楽しみが増えます。

高級ワインになるほどこの傾向は強くなるはずです。

 

バローロのクリュを試すことは、ワイン愛好者やソムリエにとって非常に興味深く、学びのある体験となることでしょう。

是非、異なるクリュ・バローロを探索して、その独自の魅力に触れてみてください。

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